ハッハッと息が上がる。ヒラヒラと足に絡みつくスカートが煩わしくて、裾と裾を結んで大股で走った。途中先生やクラスの奴等とすれ違い笑われたり怒られたりしてたけど、それさえも耳に入らないくらい、爽ちゃんをひたすら探した。

(会ってどうする。爽ちゃんには横場がいて、俺を怖がってる。一度戻って千秋ちゃんに話した方がいいんじゃないか…千秋ちゃんと爽ちゃんの関係だって、まだどうなったか分からないのに。)

余計な思考に邪魔されながら、階段を駆け上がってはクラス展示をしらみ潰しに見て回る。

肩で息をしながら時計をみやれば、あっという間に美コンの出場者発表の時間になっていた。汗だくで、せっかくのウィッグもぐちゃぐちゃ。「間に合わない。」とグラウンドに作られた簡易ステージを見ると、天の横に立っていたのは千秋ちゃんだった。

窓を開けて顔を乗り出せば天の隣に横場と爽ちゃんも立っている。赤色の髪を纏め、水色のマーメイドドレスを身にまとった爽ちゃんは、今ステージの上にたっている誰よりも一番可愛かった。

(じゃなくて…!何で千秋ちゃんが俺の代わりに…。)

現場へ戻ろうと階段を下れば、ポケットにしまっていた携帯が震えた。短いバイブ音と共に表示されたメッセージは横場からで、「1-A今後の予定は無し。」と書かれていた。

「あのお人好し…!」

『空き教室にて、待っています。』

二度目に送られて来たメッセージは、五回のバイブの後、写真付きで表示された。メッセージがひとつに、口を開けた天の写真が一枚、口と一緒に目も閉じた千秋ちゃんの写真も一枚と、天と同じように口を開けた横場の写真が一枚。

そして最後に、吹き出しのスタンプを貼って四文字の言葉が書かれた三人の笑顔の写真が一枚。



ーーー「が」「ん」「ば」「れ」。



弱い涙腺が、熱くなるのをグッと堪える。

(泣くのは今じゃない。)

ウィッグを外し、髪をグシャグシャとほどいて、頬を両手で叩いて気合いをいれた。

携帯と一緒にいれてたワックスて、落ちてくる前髪を後ろに流す。

「よし。」

携帯を握りしめて、後はひたすら走り続けた。



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