「何でイメチェンしたの。」

「…地味な自分が嫌だったから。」

「何でこっち来たの。」

「親が離婚して、それで…。」

「彼氏いんの?」

「いない。」

「爽ちゃんじゃなくて呼び捨てしてもいい?」

「ゃ、やだ…。」

「何で?」

「く、暮くんは…意地悪するから。」

「もう意地悪しないよ。優しくするって言ったじゃん。」

「それでも、やだ…。」

観念した私に畳み掛けるような質問の嵐。会って無かった中学時代の話まで聞かれて、「もういいでしょ。」と胸を押せば、暮くんは「まだだめ。」と退いてくれない。

お昼を告げる鐘の音が聞こえ、近くの教室から生徒達が出てくる。壁で死角になっている私達に、気づく人は居なかった。

ピコピコ。

どちらとも言えぬDIMEの音で我に返った暮くんは、数歩後ろに下がって携帯を確認した。

休み時間だと気づいたのか、人が来る前にかきあげた前髪をもとに戻して、分厚い眼鏡をかけた。

下駄箱で初めて会ったときの姿。

意地悪な暮くんから、優しくしてくれた柊暮人くんへと変わる姿は、何故か高校デビューを果たした私と似たものを感じた。

「…友達が待ってるから、私…行くね。」

「ま、待って。あの、さ…DIME交換しない?…これで最後の質問にするからさ。」

「……意地悪な事、送ってきたりしない?」 

「しない!」

「ふふ、うん。良いよ。私も意地悪な事言ってごめんね、暮くん。」

眼鏡と前髪で顔が隠れるからか、自然と肩の力が抜けた。入学してからあまり笑わ無いようにしてたけど、自然と出た笑顔に彼はどう思ったかな。



昔の面影が残る彼との再会を、少し喜んでしまっている心は、千秋ちゃんの顔を思い出してチクチクと膨らんでいく気持ち(答え)に針をさす。



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