それから、三人で話をした。主にチィが何でここに居たかとか、チィが納得のいくフラれ方をしたとかだったけど。それでも、三人の表情は今までと違ったものだと言う事実に変わりは無い。

「天、泣いてるの?」と、チィが話してる途中で一度だけ聞いてきた。

「どっかの泣き虫と一緒にすんな。」

繋がれた手で顔を隠しながら、俺は素直とはお世辞でも言えない答え方をしてしまったのは、図星をつかれたからだと思って欲しい。

「ふふ、そうだね。」

(どうせそんな考えも、チィには全部お見通しなんだろうけどな。)

「よし、そろそろ戻るか。」

「私こんな顔なんだけど…。」

「いつも通りだろ。」

「どー言う意味かなぁ?」

「……ねえ、二人とも。」

長期休みに入り必要の無いチャイムは、近所迷惑にならないよう止められている。ソレの存在に気づいて、時間を確認したのは誰だったか。横一列に手を繋いだまま、出口を目指せば、チィ越しに腕を引かれた。

よろめいたチィを支え、足を止めた張本人を見やれば、申し訳なさそうに俺とチィを交互に見て頭を下げた。

「ごめん。ごめんなさい。俺……ごめんなさい。」

深く深く下がる頭。「ごめんなさい。」と繰り返される言葉の意味は、この数年間のどれに当てはまるのか分からない。だけど大樹は、今それ全てに謝罪をしてるのだと思った。

「ヒロくん。私ね…あの時ヒロくんを助けたこと、後悔してないよ。天もきっとそうだと思う。髪を切られた事、本当にショックで、あの時助けてくれた二人しか信じられなくなった。それでも私…後悔なんかしないよ。だって、二人はずっと側に居てくれたもん。」

「……俺もだよ。大樹とチィが側に居たからたくさん救われてる。でもさ、これから狭い世界じゃ生きてけなるんだ。お前がどんなに俺達を欲しても…大人になれば、今までみたいに三人だけとはいかない。俺らは一人の人間で、それぞれの未来があって夢があって…後二年もすれば、それを嫌でも見つけなきゃいけなくなる。だけど進む道が違ったって、俺らは変わらず側に居るんじゃねえかな。距離的な事じゃなくて、『何してるかな。』とか、『会いたいな。』とか。そう思える関係って、どこを探しても俺達三人にしか無理なんだと思うぜ。」

「うんっ、私もそう思う。」

大樹から手を離されたチィは、俺の隣でギュッと腕を絡める。顔をあげないままの大樹からの答えを、怖がっているのかもしれない。下ろされた長い髪が大樹を見下ろす度にサラサラとチィの表情を隠していった。

(大丈夫だよ、チィ。)

今の大樹なら、きっとーーー



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