「はーい。」と返事が返ってくる。

ニコニコと貼り付けられた笑顔を、机に腰かけた俺は見上げていた。

「もう一回聞くけど、何で付き合ったの。」

「好きだからだよ。」

「タイミングが良すぎねえか、チィが元気無くなってすぐ付き合ったよな。」

「爽が落ち込んでたんだ…今しか無いと思って、アタックしちゃった。」

(目が笑ってないんだよ、馬鹿…。)

へへへと照れたように笑う大樹。昔から、コイツは表の表情に裏を隠すヤツだった。そんな大樹だからか、俺には何を考えてるのか分からない時がある。

(チィなら、わかんのかな。)



ーーーてんちゃんとチィちゃんとずっと三人でいたいんだ。



いつだったか、大樹はそう言った。

大樹は小学校時代にガキ大将だったヤツの好きな子が大樹に惚れたとかで、一時期男子共からハブられて居たことがあった。余りにも露骨に繰り返されたソレを、教師が問題にしたくない一心で見ない様に目を臥せていたのを覚えてる。

当時、大樹の隣の席だったチィは繰り返される行為に、正義感が許せなかったんだろうガキ大将に殴りかかった。

結果は惨敗。
小学生の癖に、ソイツは喧嘩に負けたからとチィの髪をハサミで切り落とした。

元々あの頃のチィが女子力より男子力をとってたくらい男勝りな女の子だった。女なのに威張るチィを、男共はよく思って無かったんだろうな。それでも長い髪だけは、亡くなった母親が好きだからと言って大事にしていたんだ。

ハラハラと床へ落ちる髪の毛はスローに見えて、チィは床に落ちた髪を拾い上げて呆然と眺めていた。

まあそんなこんなでチィが泣き始めた事に俺がキレて、主力の奴等に勝ってなんとか大樹へのいじめは無くなったんだけど。そんなハッピーエンドで、昔話は終われなかった。

大樹もチィも、壊れてしまった。



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