「大丈夫か、暮人。」

連れられるままに辿り着いたのは体育館裏。千秋ちゃん曰く、ここら辺だと人はあまり近寄らないらしく、話すにはもってこいの場所らしい。

「悪い、ぼうっとしてた。大丈夫。」

余裕もった男の笑みのついでに、最初に見た爽ちゃんと笑い合う姿が頭から離れなかった。

「…ごめんね、柊くん。さやたんの隣にいたの、千秋達の幼馴染みなの。」

ツインテールの毛先を弄りながら、申し訳無さそうに千秋ちゃんは俯いた。言葉尻に俺を見れば、力なくニコリと微笑み眉を下げる。

「達って事は、天のでもあんの。」

「…まあな。」

「横場大樹(おおばひろき)くんって言って、小学校から一緒なんだ。千秋とは小中高でずっと一緒だよ。てんてんとは中学で離れちゃったけど、今でも変わらない位仲良しさんなんだ。」

「ふうん…。で、何でそいつが爽ちゃんと一緒にいんの?」

下げた前髪が、眼鏡にぶつかる感覚でさえ、いつもとは違い不快に感じる。

「それが…。」

邪魔な髪を掻き上げて二人を見れば、声を詰まらせて怯え始める千秋ちゃん。そんな千秋ちゃんを庇うように間に入った天は、真面目な顔をして話した。

「また後で話すよ。それより、俺等の目的はチィだろ。そんな怖い顔してっと、仲直りも出来ねえじゃん。」

「…悪い。」

「分かれば宜しい。」

「よし。」と後ろにいた千秋ちゃんを安心させるように笑った天は、俺にも優しく微笑んだ。



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