B組のイケメンと、A組の美女の一人が呼び捨てで話す様子に、男子も女子も騒ぎ始める。

(お似合いだと思うんだけどなぁ。)

二人の人気の高さを目(ま)の当たりにした俺は、一人人混みから離れ客観的にその場を見つめた。

(騒がれる存在ってのは、恋愛ひとつでも大変なんだな。)

そんな場違いな事を考えながら廊下へ向かって足を進めれば、こちらを見つめる視線に振り返る。重なった視線は、すぐに下へ反らされた。

視線の主は、隣にいる男の袖を引いて俺を隠すように間に立たせた。男はその行動を不思議に思ったのか、俺が見ていることに気づいたのか、下ろされていた視線を俺の方へ上げてゆっくりと微笑んだ。

「っ…。」

何故か、触れてはいけない壁のような物が見えた気がしたーーー

「暮人、」

「柊くん、」

『こっちだよ。』

立ち竦(すく)む俺の両手を、大小二つの手で握られる。「こっち。」と手を引かれれば、トリップしていた思考は俺の元へ帰ってきてくれた。



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