ニヤリと不適な笑みを浮かべる天。
整った顔で作られる悪い笑みは、多分クラスの女子でさえ見たことがないだろう。きっとこれを女子がみたら…。なんて考えて頭を振った。

「何でって…何でだよ。」

「さーあなー。」

「勿体(もったい)ぶらずに教えろよ。」

「教えるもなにも、本当に知らねえんだって。ただ、多分だけどお前がしてきたことはムダじゃ無かったんじゃねえかって思うよ。あれだけ優しくしようとしてたんだ、それがあの風深さんに伝わらない方が可笑しいだろ。」

「まじで…嘘だろ。」

「良かったな。」と俺の事なのに嬉しそうに笑う天。あまりに嬉しそうに笑うから、天が言ったことを疑うなんて出来なかった。

少しでも、彼女のなかで起こった変化。まだ実感はないけれど、じわじわと胸が暖かくなる。

「はは…そっか。」

「頑張ったかいがあるな、暮人。」

「ありがとな、天。教えてくれて。」

「親友のためだからな。」

二人で柔らかい空気の中笑い合う。爽ちゃんとの今後の関係に可能性が出てきた今、俺は改めて千秋ちゃんのことを天に言わなければならない気がした。

俺を思って来てくれたこいつのためにも。

「ところでさ、天ーーー」

「良いよ、暮人。チィの事は本人に聞いたから。」



.