寝転がっていた体制から、体を起こす。ベッドに腰かけるようにすれば、天は座椅子にドカリと胡座をかいた。

「で、何しに来たんだよ。ただバカ笑いしに、出ずしょうのお前がわざわざ来る筈(はず)無いよな。」

「失礼な。俺はちゃんと外に出る男だぜ。」

「休みの日は基本昼まで爆睡のやつが何言ってんだ。……お前、千秋ちゃんが追いかけてきたときの事、聞きに来たんだろ。」

おどけて本題に入ろうとしない天に、少し真面目に吹っ掛ける。苦い顔をした天は、頬をかいて苦笑を浮かべた。

すぅと息を大きく吸い込み、強く吐き出す天。天なりに緊張していたのか、未だに表情は曇っていた。

「もちろん、チィの事も聞きたいけど…お前等が出ていって、風深さん後悔して泣いてたんだよ。」

「え?」 

「二人を傷つけたって。それに俺は、風深さんは優しいねって返したんだけど、『私のはただの予防線…距離を置いて、らしくない自分なんて偽って、慣れない派手なメイクをして可愛く着飾る。可愛くならないと、皆が求める私にならないと、そうでもしないと私を見てくれる人なんて居ないもの。』って言ってたんだよね。それ、お前に言ってた方がいいかなって。」

顔を伏せて話す天。最初の方に流れた重々しい空気から、何故か少しずついつもの天へ変わっていった。

声を高くして爽ちゃんが言ったであろう台詞を言う天は、少し女の子を意識してか軽く握った手を顔の横まで持っていき小首を傾げた。

「え、それ…爽ちゃんの真似?」

余りにも突然の事に、目が点になる。

「いやーあの時の顔…やっぱ美人は泣いてても綺麗だからやばいよな。」

「ん?」

「ま、俺は紳士(ジェントルメン)だから?優しくその涙を拭ってあげたけども?お前だったら危なかったぜ、あの顔は。」

「おまっ…!爽ちゃんに変なことしてないだろうな!」

「してねえよ、お前じゃねえんだから。でも、相手にはお前の気持ち少しも伝わって無いみたいだぞ。」

「元気ねえなって思ったけど、絶好調だなお前!ったく…んなのとっくに分かってるよ。爽ちゃんの中の俺は、今でも昔のままなんだから。」

「そうか?それなら、風深さんがお前は優しいって言ってたのって…何でだろうな。」



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