その日までは私は憂臣を思う女でいる。
心から裏切るために…
この日の夜、私は憂臣の部屋に訪れ、いつもはキスだけの憂臣は強く私を求めてきた。
今 憂臣を拒むよりはと私は私でなく、偽りの私として 憂臣と結ばれた。
そうすることで憂臣の私への愛が深くなる。
ひどい女…
構わない、私に心はない。
綾己に抱かれることなく恋を裂かれた私は 裂いた憂臣に抱かれる屈辱を隠しながら すべての痛みに耐えた。
本来なら綾己との幸せな甘い時間。
私は憂臣に抱かれ 裏切る日を心待ちしている。
「 里桜… 愛してる 」
憂臣の言葉は私に笑みを浮かべさせた。
でも…
愛してるの言葉は、綾己から聞きたかった。
綾己の声で私を愛してると聞きたかった。
綾己……
ずっと、私はあなただけを愛してる…
必ず 憂臣を裏切るから。
待ってて……
式の日取りや教会、招待状の準備など、私がやるべき事も憂臣は進んでやってくれた。
闇が私を包む…
時は満ちていく。
式の1週間前のある日、私は一人 ドレス専門店に足を向けた。



