第3棟には、まだたくさんのロボットが
壊れて散らばっていた。
これ全部が自分を襲ってきたと思うと足がすくむ。
仮に例えだけど、もう一回触れられたら
再起動する型かもしれない。
ジュテがいなかったら死んでた。
確実に、今ここにいなかった。
だからこそ、私は一人の研究員としてじゃなくて
命の恩人に対しての行動がしたい。
もし、それが。
何かの違反になってしまうとしても。
彼が持った感情に名前をあげるのは、私だ。
彼を今度守るのは私だ。
学会に提出されたら確実に分解される。
再構成されたジュテは、今のジュテと
全く違うものになる。
彼が持っている感情の名前が、
もし普通でなかったら、二度と私と彼は出会えない。
私は身近にあった部品を広い集めて分類を始めた。
その中に、信号を受信している部品を見つけて
私の顔は真っ青になった。
ここを、特定された……?
そうしたら大問題だ。
「南川くん! ちょっと来て!」
無線で呼び掛ければすぐ反応があった。
「どうしました? 再起動しましたか?」
「違うの、信号を受信しているの」
私は元は形のあったロボットの瓦礫を見下ろした。
後は南川くんに任せておけばいい。
ジュテと同じ型のロボットは幾つもあった。
だから、結論は簡単に出てしまったのだ。
ロボットを育てる環境を少しいじれば
感情を持たせることが可能、
またはジュテの本体にエラーが起きている。
つまり、学会に出せば
感情の操作が出来るようになってしまう。
それは、ダメなんだ。
感情の操作は、あってはならない。
ここは感情の操作の研究をする場所だけど
ロボットと人間の間にある薄い壁は
ー越えちゃ、いけない。
感情をロボットに授けちゃ、だめなんだ。
それが分かっていない学会の人たちに
ジュテを渡したらこの世界は終わる。
ジュテが自分で作り出してしまった感情の
原因を、探らなきゃ。


