研究長室を後ろ手で閉めれば、
すぐ目の前に南川君がいた。
「あ、南川君どうしたの?」
自分が後ろ手で閉めたことに、感謝する。
「あれ、どうするつもりですか」
「あれって?」
南川君の表情は冷たい。
そりゃそうだろう。
だってこの人、人の気持ちがめちゃくちゃ読めるんだ。
……私が考えてることなんて
見透かされている。
「ロボットです。禁断の」
「禁断?」
「屋嘉木先輩、知らないんですか。感情を勝手に持ってしまうロボットは……禁断中の禁断ですよ」
なにも返せない私にたたみかけるように
彼は続ける。
「勝手に感情を持ってしまうロボットというのは、恐ろしいのです」
じゃあ……じゃあ、私に彼を手放せって言うの?
どうして、どうしてだろう。
こんなに胸が締め付けられるのは。
壊されるのが怖いだけじゃなくて、
彼が自分の元から消えてしまうのが、
どうしようもなく怖いのは。
あのあどけなさを、自分の手で守りたいと
そう願ってしまうのは。
無理、無理だよ。
手放せないよ、こんな短時間で執着してしまった相手、
これからも……惚れ込むに違いない。
……惚れ込む?
自分で思っといて背筋が冷たくなる。
私が、ロボットに?
嘘、でしょ……


