膝が、思いっきり工藤さんの足にこすられて、「いたっ!」思わず叫んでいた。

ピタッと工藤さんの動きが止まる。
「ご……ごめん、痛かったか?」

「す、すみませ……」

シャツの前をかき合わせて息を整えながら、ジリッと無意識に彼から距離をとってしまう。

「いや……俺も焦って悪かった。けが人を抱こうとするなんてな」

髪をくしゃっとかきあげると、工藤さんは自嘲気味にため息をついた。

「今夜はもう帰るよ。このまま二人っきりでいたら、さすがにこの年でもちょっとキツい」

「すみません……」

「謝らないでくれないか。なんだか……俺の不安が的中しそうだ」

優しくてパーフェクトな……わたしの恋人。
なのに、どうして彼に集中できないんだろう。


どうして、あんな奴のことを、考えてしまうんだろう……。