彼に……相談してみようかな。
……突き飛ばされたって……言って、信じてもらえるかな。
あのメールを見せて、ストーカーのことも話して……

そのまま。
その一途な双眸に、吸い込まれそうになりながら見とれていると。

「奈央?」

ふいに声がして後ろを見る。
……工藤さんが立っていた。

「く、工藤さんっ!」
とっさに離れようとしたわたしの腕を、拓巳の手がつかむ。
「ちょっ……拓巳……?」

「撮影の帰りか?」

「あ……はい、工藤さんはもうお帰りですか?」

「あぁそうだけど……どうしたんだそれ」
膝の絆創膏を見て、工藤さんが不審そうに眉をあげる。

「あ、階段でちょっと転んじゃって。でも、たく……亀井くんに助けてもらったので、かすり傷ですみました」

「そりゃ大変だったな」
工藤さんの視線が、拓巳へと移る。


「……亀井、沢木は俺が家まで送ろう。お前はもう帰れ」

でも拓巳は、わたしの腕を放そうとしない。


「……奈央さんは? どっちに送ってもらいたい? オレか、部長か」

「え……?」
な、何それ。選べってこと?