自分の変化に驚いて、焦ってわたしは話題を変えた。
「あ……ええと、そういえば今日バイトは? もう9時近いよ?」

「大丈夫です。遅くなるって、連絡いれておいたから」

「……そっか」

これから、向かうんだ。こんな、時間から。
この後彼は、どんな女性の相手をするんだろう。
この笑顔を、その人に……

やだ、何考えてるんだろ。ヤキモチ、みたいなこと……。

視線を前に向けると、再びわたしを見つめていたらしい拓巳の目とぶつかる。
その視線がにっこり微笑む。

……ほんとに、こいつといると、調子が狂う。
……厄介だ。
わたしはふぅうって息を吐いた。



◇◇◇◇
会社帰りのサラリーマンたちに交じって新宿駅で降り、ホームを階段に向かって歩く。

「ね、奈央さん、よかったら軽くどっかで飯食ってきません?」

「時間大丈夫なの?」

「奈央さんのためなら」

真顔で言わないでほしい……。