「わたしだって恋人の一人くらい……」

『いるのっ!?』

うわ、やばい。食いついてきた。


「いる、ような。いないような」

『なあに、それ。お母さんに紹介できないような相手なの?』

う。
紹介できない、というか、説明できない、というか。


「とにかく! 今は仕事に集中したいの」



『……私の……』


ぽつりと、独り言のような声が聞こえた。


『私の、せいかしら。奈央が結婚しようとしないのは』

「なっ何言ってんの。仕事に集中したいって言ってるでしょ。もう切るよ? 出かけなくちゃ」

『はいはい。じゃ、また連絡ちょうだいね』

「うん、わかった」