「即戦力になってくれる奴でよかった」

「まあ……そう、ですね」
工藤さんの言葉に、わたしは仕方なくうなずいた。

相変わらず言動はチャラいけど、この2週間の拓巳の働きぶりを見る限り、確かにその能力は認めざるを得ない。

とにかく頭の回転が異様に速いの。
1を聞いて、10どころか14、5まで予想して、正しい道筋をはじき出していく感じ。

グラフィック系ソフトにも明るくて、イラストレーターやフォトショップは本職並みに操れて。修正も自分でささっと入れてしまう。

加えて、あの人懐こい性格のせいか、所属は編集チームだけれど、曲者ぞろいのデザイナーたちにも可愛がられてて。翠なんか、「デザインチームにちょうだい」っていってくるほどだから。


——ただ。


「毎日定時あがり、っていうのはちょっとびっくりしましたけど」

「あぁ。そうみたいだな。何か問題起きてるのか?」

「いいえ! きちんと仕事はするんですよね。どうやってこなしてるんだろうって不思議なくらい」

マスコミ業界の退社時間なんて、あって無きがごとし、だと思ってたけど、
彼はその暗黙の了解をらくらく破ってみせた。
わたしが知る限り、毎日きっちり6時に退社していく。

でも、自分の仕事はちゃんと終えて、周りの手伝えそうなところまでさりげなくフォローしたうえで「お先失礼します」ってあの笑顔で言われるんだもん。
誰も何も言えないのよね。