Mysterious Lover


彼が……振り返る。
信じられないっていうように目を見開いて。

「奈央さん? なんで……」

駆け寄ったわたしは、乱れまくってる呼吸を、口をパクパクしながら整える。
「あの……えっと、その……チーズケーキを……」

「チーズケーキ?」

違う違う! そうじゃなくて! そうじゃなくて……
言いたいのは……伝えたいのは……

「あのっ……わたし」

息を吸って。そして、一気に言葉を吐きだす。
「待ってていい?」

必死に、言葉を口にのせる。

「まだ、状況と自分の気持ちが一致してないっていうか、混乱してるところ、あるんだけど。でも、拓巳がアメリカ行ってる間に、ちゃんと気持ち整理しておくから。拓巳と向き合えるように、しておくから」

ちゃんと、好きって言えるように。

「だから、その……待ってても……いい?」

言い切って……呼吸を止めるようにして返事を、待った。

周囲のざわめきだけが、わたしたちの間に流れていく。

言ってよ。お願いだから。何か……言って?