逃げるわたしの舌は、拓巳のそれにすぐ追いつかれ、強くからめとられる。

「ん……っ……やぁっ」

ビリビリッて、さざ波のような柔らかな電流が体を駆け巡る。
それは今まで感じたことのない、未知の……

「奈央さん……奈央さん……っ」

キスの合間、うわごとみたいに、拓巳がわたしの名前を呼ぶ。
とろりと甘い媚薬のように、ささやきは耳から入り込んで、わたしの体を溶かし、抵抗を奪っていく。


罪滅ぼしなんでしょう?
もう、全部終わったのに。
どうして、こんなキスをするの……?

考えなきゃいけないことは、たくさんあるはずなのに。
頭が真っ白に、ぼんやりと霞がかかったみたいに、思考が麻痺していく。

そう、きっとこれは薬のせい。
だから、仕方ないの。
手も足も、重くてだるくて、動かない。だから。
今だけ、この一瞬だけ……

言い聞かせて、わたしはただ、繰り返される激しくて甘いそのキスに、身を任せた。