工藤さんの言葉が……意味を成す言葉として理解できない。
何を、言ってるの?
「信じていた男に裏切られる。かなりの地獄だろう? そうやって、あの男の大事な大事なお前を、めちゃくちゃに、ボロボロにしてやったら……くくっ……相当愉快だろうと思ってね」
「あの男……?」
誰?
……拓巳……のこと?
「きっとあの男は死ぬまでずっと、後悔し続けるだろう。祥子に手を出したことを」
え?
祥子……?
わたしは突然現れた見知らぬ名前に戸惑った。
一体、誰のこと?
工藤さんは、どこか陶然とした表情で歩みを進める。
わたしは距離をとろうと後ずさった。
とにかく、とにかく逃げなくちゃ。
今の工藤さんは、絶対おかしい。いつもの工藤さんじゃない。
工藤さんは、1歩、1歩、近づいてくる。