「あ、あのすみません! えっと……わたし……」
左手にワインボトル、右手に受話器を持った自分を見下ろす。
へ、変よね。どう見ても。
ど……どうすれば……?
恐慌状態の頭を無理やり回転させる。
「翠に電話するって約束してたの、急に思いだして。わたしの携帯、バッテリー切れちゃってて。それでこれ、使わせていただこうかなと」
焦ってどもりそうになりながら、言葉をつなぐ。
怪しまれてない……?
びくびくしながら、こっそり工藤さんの表情を伺う。
「構わないよ」
そこには……いつもと変わらない穏やかな笑み。
「あ、ありがとうございます」
わたしは震える手で受話器を握りしめる。
とにかく、確かめるだけ、確かめて。
履歴を——
「履歴は全部、消去してあるから」
どくんっ——
わたしははじかれたように振りむいた。