ゆっくり、彼の指が、わたしの指に絡まる。
テーブルの影、周りからは見えないところで、そっとその長い指が、わたしの指をたどり、手のひらまで優しくなでていく。

ぞくぞくって、体の芯に、何かが灯る。
何かがうごめく。
「亀井く」

「オレ、あきらめないよ」

亀井くんの言葉が、視線が、魔法の呪文みたいに、わたしの動きを封じ込める。
手が……ふりほどけない。

「あなたはきっと、オレを好きになる。朝も晩も、一日中、オレのことを考えるようになるよ」


店内のざわめきが遠ざかる。

紡がれる言葉は、真っ赤に溶けた飴みたいに熱く、そして甘かった。