「あ、何かお手伝いします」
その背中に声をかけると、いたずらっぽい視線が振りむいた。

「ワインに合う料理を作るのは、ワイン好きの道楽なんだ。俺の好きにさせてくれ」

「あ……はい」

道楽、なんて言うけど、工藤さんて料理うまいのよね。悔しいけれど、わたしよりずっと。
わたしはおとなしく、クラシックなデザインのふかふかソファに座って、待たせていただく。

シルバーに輝くアイランドキッチンの向こうで、てきぱき動き回る工藤さんをぼんやり眺めていると。

こんな風に彼の料理を待っていた時間を、そしてその後に続く2人で過ごした夜を思い出してしまって……わたしはにわかに緊張し始めた。

どうにも落ち着かなくて、立ち上がって窓辺に寄る。
無数の色彩を放つ光が視界を覆いつくして、わたしは少し目を細めた。
この光一つ一つの、その傍に誰かがいて、生活していて。

もしかしたら……拓巳も。

何を、考えてるんだろう? 彼は、今……?

だ、だめだ! また拓巳のことなんか!
ギュッと唇をかむ。