楽しそうな、家族。
幸せそうな、家族。

そこに、わたしの入る場所は、どこにもない。


ねえ、お父さん。

わたし、ここにいるんだよ。
お母さんに内緒で、お父さんに会いに来たんだよ。


どうして気づいてくれないの?

どうして、その『たくみ』って子ばかり見てるの?

どうして、どうして、どうして?
お父さん、どうして——?




「……さんっ! 沢木さんッ!」


ビクッとわたしは顔を上げた。

やだ、何ぼーっとして……。

辺りを見回すと、スタジオの入り口でスタイリストの夏目さんが、手がちぎれそうなくらい激しく手招きしていた。
「こっちこっち! クライアントさん、ご到着ですよ」