「どうでもいいけど今更。とにかく拓巳の計画はすべてバレました。ゲームオーバー、ってこと」

じゃあね、と歩き出そうとした腕を、「話聞けよっ!!」って強引につかまれて引きずられ、わたしの両腕はものすごい勢いで壁に縫いとめられていた。

「いたっ……いってば! は、放してよっ!」

拓巳の手は、ぴくりとも動かなかった。

息が、できなかった。

わたしをひたと見据える拓巳のまなざしは、見たこともない色をしていた。怒り? 悲しみ? それとも……

「奈央さん」

ふいに、その瞳が揺れる。熱っぽくうるんでる。
反則だ、こんなの。こんな目で、見つめるなんて。

「確かにオレは……あなたが誰か、最初から知ってた。知ってて近づいた。それは認めるし、謝ります。でもオレは、あなたを傷つけようなんて思ったことは一度もないっ! オレは、オレは本気であなたのことをっ……!」

「しょ……小学2年の時だった」
感情のフィルターがはずれたその声は、まるでロボットのそれみたいに、無機質に響いた。

拓巳が、「え」て、言葉を切る。