「全然平気。なんかミイラみたいになってますけど、一応念のためってだけなので」

男前のミイラでしょ、あははははって明るく笑う。
拓巳も、いつも通りだ。変わりない。

でもふと、笑い声が途切れる。

「ちょっと今いいですか、今度の撮影について、打ち合わせさせてもらっても?」

その瞳に、笑みはなかった。
あぁ、きたな、って思った。


仕方ないよね。
逃げ回っていても、彼はあきらめないだろうし。

ぐちゃぐちゃの心のまま、それを押し隠して、わたしは立ちあがった。


◇◇◇◇
促されて会議室に入るとすぐ、拓巳はドアを閉めた。

「なんで携帯、出てくれないんですか。オレ、話したかったのに」

「何を話すの?」
声が、硬い。