確かに拓巳の写真。だからこれ、拓巳の免許証、よね? 
なんで、こんな妙な感じがするんだろ?

免許証をもう一度まじまじと見た。
何が、変なんだろ……?

そして。

ようやくその違和感の正体に気づいた。
気づいてみれば、単純なことだった。

名前だ。拓巳の名前が、違うんだ。
亀井拓巳、じゃない。
そこに記載されていたのは、<吾妻拓巳>という名前。

どういうこと? 亀井じゃ、ないの?


「あづまたくみ……?」


口の中でつぶやく。
そして。


ザッと……
体中から血の気がひいていく音を、聞いた気がした。


空気が、止まる。


スローモーションのように、自分の手からひらりとこぼれていく薄っぺらいそれを、わたしは呆然と見下ろした。


床に免許証が落ちる。

カチン……何かにヒビが入ったような、硬い音を響かせて。