「ご友人の方ですか?」

「あ、会社の同僚です」

「では申し訳ないんですが、着替えをお願いできますか? 血で汚れてしまったので」

「わかりました」

お願いしますね、とナースが去っていくと、わたしはホッと息を吐いて再び腰を下ろした。

窓に切り取られた真っ黒な空に、月は見えない。
わたしの心みたいに、何も見えない。

拓巳は、本当にストーカーなの?
わからない。わからないけど。

でももし。

拓巳がストーカーなのだとしたら、どうして助けてくれたんだろう。
もしかしたら、命がなくなっていたかもしれないのに。

今日だけじゃない。
今までだって、拓巳はいつだって、そばにいてくれて。
冗談ぽくからかって、わたしのペースを乱しまくってくれたけど。
でも、確かにわたしは、守られていたよね? 彼の全力で。
それは、本当だよね?