「変な電話がさ、かかってきて」

「電話?」

「『沢木奈央は俺のものだ、いちゃつくな』って。ボイスチェンジャー越しの。例のストーカーだろそれって。だから心配になって」

「後つけてたの? 声かけてくれればよかったのに」

「なんかタイミングつかめなくて。怖がらせたくなかったから。でも逆に怖がらせちゃったかな。ほんとごめん!」

「ううん、いいけど……びっくりして」

拓巳はいつもの笑顔をわたしに向け、手を差し出した。
「送るよ」

「……うん」

まだ迷っているわたしの手を、拓巳の手がつかんで、ぐいって引っ張った。
立ちあがって、拓巳に手を取られて歩き出す。

暖かな手が、わたしの手を包み込んでる。

大丈夫。これは拓巳なのよ。
ストーカーなんかじゃない。



でも……
隣を歩く拓巳の横顔を盗み見ながら、まだわたしの心は動揺しまくっていた。