微妙な、曖昧な、関係のわたしたち。
つきあってる、って言いきっちゃうのは、ちょっと迷うところなのだ。

「お泊まりしても、好きだとか付き合おうとか、言われたことないんだって」

う……
バッサリ、はっきり、容赦なし。
ありがとう翠、説明してくれて。

「何だそれ、つまりセフレかよ!?」

「セ……」
がっくり、肩が落ちる。
あのぉ、一応ここ、他の会社の人もいるんで、言葉を選んで、オブラートに包んでいただけると、ありがたいかな、と。

「ああのね、そこまでライトすぎる関係じゃなくて……。デートもするし、普通に」

たぶん、工藤さんは一度結婚に失敗しているから、関係を進めることに躊躇いがあるんだと思う。

そしてそんな曖昧な関係が、わたしには心地いいわけで。

だから、今の状況、わたしの方は何の不満もないのだ。

「誰だよ? 俺が知ってる奴?」

田所が食いついてきて、ちょっと困ってしまった。
田所になら話しても構わないけど……どうしよう。

その時だった。
「奈央さん!」

げ、この声は。