◇◇◇◇
それからわたしは、朝食の準備にとりかかる。
留守にしてたから、冷蔵庫にろくなものは残ってなかったけど、
和食がいい、という拓巳のリクエストを叶えるために、
なんとかありあわせの野菜でお味噌汁をつくり、出汁巻き卵を焼く。
そして、冷凍ご飯をレンジでチン。

「すっげいい匂い……」

後ろから鼻をひくひくさせて、拓巳が覗き込んでくる。
ほとんど犬だね、って突っ込もうとして振り返ると、少しハネた前髪の間からのぞく目がわたしをじっと見つめていて、それがもう、ものすごく色っぽくて。
鼓動が、制御不能になる。

「もう邪魔っ! あっち行ってて」
動揺を悟られたくなくて、わたしは乱暴に拓巳を追い払った。

「ちぇっ……」

ふてくされたように背中を向ける彼をちらっと見て、わたしはこっそり息を吐いた。


◇◇◇◇
「いただきます」
両手をしっかり合わせてから、拓巳は箸を手に取った。

そして。