瞼がぴくって動いて、ゆっくり拓巳が目を開けた。

「お、おおはよっ」
見とれていたことがバレたかと、ちょっとどもりながら声をかける。

でも拓巳は、一瞬どこにいるのかわからないのか、きょとんと天井を見上げて、そして……その視線をそろそろとわたしに合わせた。

そのぼんやり加減がなんかかわいくて、ぷぷって笑ってしまいながら、もう一度声をかけた。

「何よ、寝ぼけてるの? もう朝だよ拓巳。おはよう」

「……奈央さん?」

瞬間、拓巳の双眸が、ふっと見開かれた。信じられない、というように。
それから……

え?

瞳が、今……潤んだ……?

確か彼、前にもこんな目でわたしを見たっけ。
「どうかした……?」
どうしてそんな、切なそうな……

「……おはよ奈央さん。腹減った」

いつもより少しハスキーな声で笑う拓巳は、もういつもの拓巳だった。