「いてっ…ぇ……」

頬骨の上、血がにじんだそこへ消毒液をなじませると、かなり染みたらしく、拓巳がギュッと眉を寄せた。

「ご、ごめん。染みるよね?」

「ん。平気」

顔の傷はそんなにひどくないけど……
シャツを脱いでもらうと、わき腹が赤く腫れてた。

外から見えない所をねらったのね、性根腐ってんじゃないの。ったく。
わたしは湿布を袋から取り出しながらつぶやいて。
そして、チラチラって拓巳の体を盗み見てしまった。

白い喉からなめらかな鎖骨……スリムだけれどちゃんと筋肉がついた引き締まった上半身……。
全身から、フェロモン、ていうのかな。
視線をはがすことができない色気がにじんで……う。眩暈が……。

って、なな何見とれてるのよ、わたしっ!

「奈央さん、ごめん、ちょっと……急いでくれる?」

「え?」

拓巳は、何かに耐えるように、辛そうに唇を結んでいる。
あ、あぁそっか。
「ごっごめんね、寒いよね」

わたしは急いで湿布を貼った。

「ありがと」
そそくさってシャツを羽織って、拓巳は立ち上がる。