「くそっアドレス変えてきやがった」
拓巳が毒づく。

頭が……痛い。
指の先が……もう感覚がないくらい冷たい。スマホを持ち続けられないほど。
遊ぶって、一体……今度は、何が……

「相手にしちゃだめだ」
拓巳がわたしの肩に腕を回し、抱き寄せる。

チン——
目の前で、するするとエレベーターのドアが開いた。

拓巳に促されるように中へ入ると、珍しいことに先客はいなくて、わたしたちは2人きりだった。
「大丈夫」
勇気づけるように拓巳は言い、その腕に力をこめた。

「……うん」

不思議……。

寄り添った体から伝わる体温が、こんなにも落ち着くなんて。
こんなにも、うれしいなんて——


その時だった。



がくんっっ——


大きく床が揺れて……エレベーターが止まった。