朝、目を覚ましたわたしは、自分がベッドに寝ていることに気づいた。

あれ……わたし……?

昨夜の出来事がよみがえってきて、ガバッて飛び起きた。

自分で移動した記憶はなかったから……拓巳が運んでくれたの?
お、重くなかったかな……。

室内に拓巳の姿は……ない。

なんだかちょっとがっかりして、思わず視線が沈む。
すると、サイドテーブルに置かれたメモ用紙が目に入った。

【おはよう奈央さん。警察に箱届けてくる】

あ……そっか……。
これからどうするか拓巳と話し合って、そういうことになったんだっけ。

昨夜はそれから、一緒に非通知着信を拒否にして、あのメアドを拒否アドレスに登録した。


ふぅ。
ため息をついて、ベッドから降りた。
昨夜のすべてが嘘みたいに、窓からは平和そのものの光が注いでいる。

一人で取り残された1LDKは、がらんてなんだか大きくて……空っぽだった。
いつもと同じ部屋なのに。どうしてだろう?
静かすぎて落ち着かない。

その時わたしが考えていたのは、ストーカーのことじゃなかった。
昨夜の……拓巳のこと。