……ん?
あれ?


唇は、そのままいつまでたっても降ってこなくて。


あれ?


ゆっくり目を開けると、わたしの両脇に手をついて、じっと見下ろす拓巳と視線が絡んだ。

「拓巳……?」

拓巳はまぶしいものでも見るみたいに目を細めて、少し苦しそうに眉を寄せてる。
「どうか……したの?」

拓巳はニコッと笑ってわたしの上からどくと、テーブルの上のマグカップを手に取った。

「決めた! ご褒美はこのカップにする」
マロマロンのカップを手に、ニッと笑う。

「はい?」

「犯人つかまえたら、こいつはオレ専用ね」

「ええっ!? そんな勝手に……」

「で、オレがこの部屋に来た時は、いつもこれで、お茶出して」

「いつもって……いったいどんだけ頻繁にくるつもりなの……」

「はい、約束」
わたしの手を取り、強引に自分の小指をわたしのそれに絡めて。
そして拓巳は、屈託ない笑みを浮かべた。