王子様の後を追うと、ものの数分で密林を抜け、学校敷地内へと戻ってくることが出来た。

私を先導する間ずっと、王子様は黙っていた。

後ろから眺めていても、そのスタイルは抜群。

少女漫画に出てくるような理想の王子様像そのもの。

寝坊で得られたものがこの出会いなら、私はきっと幸運なんだ。

せめてほんの少しでも彼にお近づきになりたい。

そう思い名前を問おうとするのだが、王子様は一度も私を振り返ることも無い。

一番初めに話し掛けてくれたとき以降、少し近づき難い空気を放っていた。

そのせいで私は、どうしても彼に話しかけるチャンスを掴めないまま、入学式が行われている講堂の前に到着してしまったのだった。

「この扉から入れ。中に入ったら適当な教師に聞けばしかるべき場所に連れて行ってもらえるだろう。それじゃあ」

無愛想にそれだけ告げると、王子様は踵を返してしまった。

少しでいい、彼のことを知りたい。

早くしないと行ってしまう。

彼と会話をしたい!

そんな焦りのせいで、聞こうと思ったことを口にすることは出来なかった。

代わりにーーーー

「あの、あの、ありがとうございました……!」

王子様はほんの少し体を傾けて振り向くと、小さく微笑んで言った。

「入学おめでとう」