恋の音はすぐそばに

「あいつが助けたくて助けたんだ。菜緒の意思だ」


「菜緒先輩の…意思?」


「そうだ。だから自分を責めるんじゃねぇ。責める暇があるなら、こいつが目を覚ました時に礼を言ってやれ」


自分を責めるのではなく、菜緒先輩にお礼を…。


「…俺は親に連絡してくっから」


何も、言わない。


頷きもせず、俯くだけの私に先輩は小さくため息をついた。


「俺は昔な、すっげぇ大切なやつがいたんだ」


大切なやつ?


それに過去形って…。


「勘違い、すれ違いでさ、お互いの本当の気持ちもわからないままさよならだ」


そう話す紫緒先輩は本当に悲しそうで、辛そうで。


どれほどその人が大切だったのか痛いほど伝わってくる。


「お前と菜緒がそうなるとは限らねぇ。だけど素直な気持ちを伝えることが大事だってことは覚えとけ」


「っはい!ありがとうございます!」


「おう。…じゃっ、ちょっと行ってくるから菜緒のことよろしく」


そう言って、紫緒先輩は片手をヒラヒラと振りながら出て行ってしまった。


静かな空気が私を包み込む。