恋の音はすぐそばに

「それでその帰り道に、学校まで傘を届けようとしてくれていた天音と会ったのよ」


うそ…。


全然覚えてない。


「まぁ、天音が覚えてなくても仕方ないよ。あれは私が中学1年生の時のことだもん」


心羽が中学1年生ということは、私はまだ小学6年生。


4年前か…。


記憶力が特別いいわけでもないし、それはちょっと覚えてないや。


「ほら、もう横になって。ちゃんと休んもう?」


「…心羽は?」


帰っちゃうの?


「天音が心配だから病院に泊まるよ。簡易ベッドがあるから。…菜緒くんも心配だし」


菜緒先輩…。


さっきと変わらず、目を開けず、微動だにすらしない。


それがすごく辛くて。


泣きそうになるのを頑張って堪える。


私が泣いていい立場じゃないのはわかってる。


それでも…っ。