「じゃぁ、今日はここまで。ちゃんと復習してもう補習に来ることのないように。」
気づいたら補習は終わっていた。
あっ!と自分のノートを見下ろせば
自分のノートは案の定真っ白だった。
美咲は教科書とノートを机の上で
トントンと整えてカバンに閉まっているところだった。
「瞬くん、どうかした?」
「え!...あううん。なんでもないよ。」
「変なのー。じゃぁね。また明日。」
一緒に帰ろう。
そのひと言が言えなかった。
だって補習中。
俺は美咲をずっと見ていたのに
一度も目が合わなかった。
しまわれる時に見た、彼女のノートは
真っ白だった。
「あれ…?」
ついさっきまで彼女が座っていた席の下。
落ちている、薄っぺらい紙を拾ってみると
見覚えのある紙。
数時間前、何度も見てはため息をついていた数学の小テスト。
でも俺のじゃない。
俺と違うことは
書いてある名前欄が美咲の名前が書いてあることと
解答欄は全て空欄で、右上にはデカデカと0と書かれたことだった。
視界の端で校庭の桜の木が風で揺れた。
儚くとも、枯れてしまった葉が散ってゆく。
END