1枚の薄っぺらい紙。
何度も見ては、『はぁ。』っと
ため息をつく。

いや、俺が悪いんだ。
誰のせいでもない。
自分のせい。

そぅ、割り切って先日返された
数学の小テスト用紙をカバンの中に
突っ込んだ。

そのテストの右上には
100点とはかけ離れた点数が
赤字で、デカデカと書かれていた。


テスト前に
数学の先生が言っていた
赤点者のみの補習を受講するハメになった。

そんな言い方をしたら
数学の先生に悪いか。
そもそも勉強しなかった
俺が全面的に悪いんだ。


「...あれ?美咲?」

補習者が集められた教室。
そこには不似合いな人が
教室の1番後ろの窓側の席に座っていた。

「あ、瞬くん」
「え?補習?」
「うん、点数悪くてさぁ...」

えへへ、と笑った美咲は
どの教科だって成績上位者として
名前を貼り出されるぐらいなのに。

まさか補習なんて。


「ここ、いい?」
とひと言断りをいれてから彼女の隣に座った。

窓側の席は茜色の夕日が射し込んで
彼女の横顔をきらきらと輝かせていた。


思い返せば半年前。
俺が彼女を好きになったのは、
まだ桜の花が咲いていた時期だった。

告白はおろか、遊びにも誘ったことがない
俺にとってはこの補習はチャンスかもしれない。

「でもさ、美咲がいるとは思わなかった。」
「あー。今回数学だけ難しくなかった?」
「むずかった!まぁ俺は数学だけじゃないんだけどねー。」

はは、って笑った俺につられて
美咲も笑った。

補習が終わったら一緒に帰れる?と。
ドキドキする心臓を誤魔化しながらそう
誘おうとしてたら教室のドアが『ガラっ。』と
開いた。

...なんだ、先生きちゃったよ。

「それじゃー、補習始めるぞー。」

数学担当の櫻井先生の声は耳に入ってくるけど
頭には全く入ってこなかった。

チラチラと隣の彼女の様子ばかり伺って。
これじゃ補習の意味が全然ない。