オホーツクの壮大な白い海をビデオカメラで
撮影していると、女の子が話しかけてきた。
路線バスや観光施設で見かけていて
彼女もひとり旅をしているようだったので
光一は内心彼女のことが気になっていた。

「すいません、そのカメラの望遠であそこをみてもらえますか?あれって、アザラシですよね」
彼女が指さす方向を追ってみると
彼女の言う通り、アザラシが流氷の上で
寝そべっている姿を見ることができた。
「たしかにアザラシですね。でもよくわかったね」
「私って、目がいいんですよ」
「きみも覗いてみなよ」
光一はビデオカメラを彼女に手渡した。
「わあ、可愛い、ほんとうにアザラシですね」
彼女は屈託のない笑顔を光一に向けた。