千尋は、顔が見たかったので


ゆっくりと身体を離した。


「ヒデさんから事情を聞いたよ。

 奥さんも辛かったんだよね?

 だから、終わりにしようと・・・

 でも、また、聖菜に言われたんだ。

 《会いに行けば》って!

 誰かに言われたかったのかも知れない。

 背中を押されて、来る勇気が出たの。

 シュンの気持ちも知りたかったし

 どうなっても、受け止めようと思って・・・」


「俺も、ヒデから聞いた。

 追い掛けれなかったんだ。

 事実は変わらない!

 それでも、一緒にいたいなんて・・・

 追いかけたら、言ってしまう。

 離したくないと思う。

 だから、何も言わずに別れた方が・・・」



2人の気持ちに変わりはなかった。


奥さんが妊娠してるのも変わらない。



でも・・・それでも、一緒にいたかった。



「奥さんになんて?」


「《彼女?》って聞かれて《そう》と答えた」



シュンの淡々とした口調に、逆に戸惑った。