カモフラージュ


千尋も握り返す。


「だから、優しい笑顔するんだよね?

  最初に会った時、天使が笑ったと思った」


「そう?自分では分からない。

 でも、嫁さんには笑えなくて

 《怖い顔してる》って、娘に言われた」


ショックだったんだろう、表情が曇る。


「その娘さんを泣かせる事になるよ?」


「・・・」


「あたし達だけの問題じゃないよ?」


「・・・」



ただ、時間だけが過ぎて行く。



それでも、千尋の気持ちは決まっていた。


「友達に言われた。

 《覚悟は出来てる?》って

 もう、会う事は無いからって・・・

 でも、彼女は分かってたのかも?

 あたしが諦め切れないって!」


「覚悟?」

 
「奥さんには、絶対ばれないように!

 だから、毎日連絡してとか

 朝まで一緒にいたいとかは言わない。

 メールと電話の履歴は、即効削除する!

 出来る?」



彼は小さく頷いた。