キンモクセイ


彼女は驚いたように目を丸くして、


俺から目を離さない。


先に目を逸らしたのは俺だった。


ドクンドクンと胸が高鳴る。


「イッチー、どしたの?」


サヤが俺の顔を覗き込んだ。


「えっ、いや、何も。」


俺はサヤの目を見て無理やり笑顔を作ると


もう一度横目で彼女を見た。


彼女は携帯で誰かと連絡をとっていたようで、


携帯をポケットに入れると


隣の車両へ歩いて行った。