後ろ姿の愛し君へ



錆びついた声で


“有難う”



むせび泣く声は
喉で消えて

踏み外した崖を奈落
波間に埋まる声

平和な日々が終わる時


僕は誰よりも
残酷になれるだろう

愛し君の
温かな背を
右手のひらに押しつけた



後ろ姿の愛し君へ

其れを愛す僕の異端へ