その女の子の診察が終わると、きゆは会計を済ませ、無事に薬の処方箋を渡すことができた。


「ありがとうございました、バイバイ」


きゆが女の子にそう声をかけても、女の子はきゆの後ろに立っている流人ばかりを見ている。


「ここちゃん、苦しくなったらすぐおばあちゃんに言うんだよ」


流人がそう言うと、女の子は笑顔で大きく頷きおばあちゃんと一緒に帰って行った。





「お疲れ様」


きゆは流人に温かいコーヒーを淹れて渡すと、流人はもう机の上で何か調べものをしていた。


「きゆ、俺、マジでヤバいよ。
専門外の知識がほとんど頭から抜けてる。
あの子の喘息の薬だって、院長先生が丁寧にカルテに書いてくれてたから何とかなったけど、こんなんじゃダメだ。

小児科か……
今日から、勉強しなきゃ…

整形外科の診察が多いって思ってたけど、そんなわけにはいかないな…」


流人は頭を掻きむしりながら、必死に医学書をめくっている。

きゆはそんな流人の背中を見ていると、胸が熱くなった。

私の生まれ育った小さな島の人達のために、こんなに一生懸命になってくれている流人の事を、私はつき離すことができるのかな……