でも、それでも、こんな私だけど、人並みに結婚に憧れていた。
あの私の26歳の誕生日までは…



池山流人は自他共に認める将来を有望視される敏腕整形外科医だ。
手術の腕前はベテランの先生をしのぐほどで、学ぶ事に関して言えば、努力と時間を惜しまない人間だった。
でも、仕事を離れると、今風のノリのいいチャラ男に成り下がる。
大きな二重の瞳に鼻筋の通った綺麗な鼻、口角の上がった唇はたまに妖しげな色気を醸し出した。

流人が他の病院での修行を済ませ自分の病院に帰ってきた時、私は整形外科担当の看護師だった。
整形外科と言わず他の科も合わせ皆の注目の的だった流人は、2世ドクターらしくない軽いノリで皆に溶け込んだ。

品のいいチャラ男というのが、その頃の流人のあだ名だった。

軽いジョークで皆を笑わせ、暇があれば合コンにもよくつき合う、そんな流人の彼女の席を皆が狙うようになってきた頃、私は流人に食事に誘われた。



「きゆさん、俺が、きゆさんが今まで食べたことがないくらいの、ほっぺが落っこちそうになるほど美味しいハンバーグを食べさせてあげる」