君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜




翌朝、きゆは港に行く前に病院へ寄った。
昨日届かなかった新しい先生の詳細の載った資料を、ファックスから抜き取るためだ。
でも、その資料は届いていなかった。

きゆはため息をついた。
島の人間はのんびり屋さんが多いのは分かっているが、東京の忙しい病院でバリバリ働いてきたきゆにとっては、あり得ない事だらけだったから。



港に着いたきゆは人の多さに驚いてしまった。
新しく赴任してくる先生のために集まったのか、役場の人や見慣れた近所の人などざっと30人はいる。


「足立さ~ん、ここで~す」


きゆは役場の人達が集まっている場所へ呼ばれた。


「足立さん、ごめんなさいね。
昨日、横断幕作りに夢中になって、この資料を病院に送るの忘れてしまって…」


そう話す白髪交じりの優しい目をした女性は、昨日の電話の相手だった。


「あ、はい…」


きゆはつれない返事をして役場の封筒に入ったその資料を受け取ると、その皆で頑張って作った横断幕に目をやった。



………え? うそ??