君の中で世界は廻る〜俺様ドクターの唯一の憂い〜




きゆは電話を切った後、慌てて病院内の掃除をし始めた。

そして、院長先生の部屋に行き棚にしまっている白衣をチェックしてみると、クリーニングに出された新品同様の物が何着か置いてある。

……でも、一体、どういう人が来るんだろう?
若い人?年配の人?
それで全然着るものが違ってくるのに。


きゆは早く新しい先生の詳細が知りたくて、ファックスが届いてないか受付に行ってみたが、まだ何も届いていなかった。

田中医院は小さな病院だ。
掃除をするにしても、あっという間に終わってしまう。
患者の数も日によってゼロの日があるのにも関わらず、こうやって経営が成り立っているのは村からの補助金のおかげだった。
小さな島だけれども病院がないと不安で生活ができない。それくらいにこの島にとってこの病院は、大切な神聖な場所だった。


きゆは訪問診療のためのワゴン車をきれいに洗った。
大きく田中医院と書かれているこの車は、先生が診察を再開すれば、徐々に増える訪問診療に使うことになるだろうし、それに、明日の迎えにもこの車は必要だった。


きゆは全ての仕事を済ませ、またファックスを見に行ったが、まだ、何も届いていなかった。