元,陸上部。
足には自信があるつもりだった。

…だが。



「あれ?ちょっと秀君は?」

「いない?!」

「逃げたわね!」


女子達は状況を把握すると争うように次々と教室を出,秀の後を追いかけた。

「待ってー!!」

「げ!?マジかよ!?」

彼女達の方が一枚上手のようだった。
次第に両方の差が縮まる。


「くそー!なんで初日からこんな目にー!!!てか玄関どこだっけ!?」

転校初日。見事に迷っていた。

「いた!こっち!」


女子達は相変わらず鼻を効かせ秀を追い詰める。


「ちくしょー!!!」

秀が涙目で廊下を疾走していると

「おい!こっちこっち!」
「え?おわッ!!」


突然声がしたかと思うと,近くのドアから手が伸び,何者かに引っ張られ小さな個室に隠れた。

「あれ?消えた!?」

「きっとあっちよ!!」


女子達の走り去る音を,秀はドア越しにドキドキしながら聞いていた。


「良かった‥」

「気をつけろよー?ここの女子は肉食獣並だからなぁ」

秀と同じ態勢でドア越しに足音を聞いていたのは,先ほど秀を助けた人物だった。